てぃーだブログ › 他人の顔 › 【す】 › 菅原文太

2014年12月10日

菅原文太

菅原文太


 しかしまぁ、こうも訃報が続くもんかね。一報が日本中を駆け巡って一週間が経ったいまも、完全に喪失感から抜け出せないでいる。

 これも虫の知らせというわけではないが夏頃から『トラック野郎』シリーズを見始めたばかりである。菅原文太演じる星桃次郎と相棒のやもめのジョナサン(愛川欽也)。貨物運搬で生計を立てる二人が全国津々浦々を愛車のトラックで駆け巡る東映の看板シリーズ。全10作中5作目の折り返しまで来たところでこの訃報に接したときは毎度毎度のエンディングで別れの言葉を告げずにトラックで去って行く桃次郎の後ろ姿を見送るヒロインさながらの心境であった。

 これは高校時代の歴史を教えていた先生の言葉だが、日本人は昔から「お約束」を好む民族だという。それがよく表れていたのが長年続いた「水戸黄門」や「遠山の金さん」などの時代劇。最後の“印籠”や“桜吹雪”は「よっ、待ってました!」の瞬間である。『トラック野郎』もお約束の連続である。冒頭で便意を催してトイレに駆け込んだりする無様な状況でのヒロイン初対面、中盤でのライバルとの食堂での乱闘、終盤でのヒロインを意中の相手の元へのトラック爆走。日本人の「よっ、待ってました」をうまいこと刺激できたのが10作も続いた秘訣か。

 『トラック野郎』シリーズが終了して30年余り、「水戸黄門」も「遠山の金さん」もいつのまにか消えて日本人が「よっ、待ってました!」と言わなくなってしまったんだろうか。桃次郎の逝去は日本人にとってあるひとつの節目のような気がする。



Posted by イリー・K at 22:19│Comments(0)【す】
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。